ジョン・ホスパ−ス「説明とは何か」(John Hospers, "What Is Explanation")
(Introductory Readings In the Phylosophy of Scienceより)
「科学はたんに現象を説明するだけで,なぜそうなのかについては答えられない」というふうに言われることがある.
また,「科学は法則を導くだけで,なぜその法則が存在するのかについては答えられない」と言われることもある.
こういった主張は,いったい何を言いたいのだろう?
“惑星の公転が楕円軌道を描く”という現象がなぜ起こるかというと,ケプラーの法則があるからだ.
ケプラーの法則が存在するのは,万有引力の法則が存在しているからだ.
万有引力の法則が存在しているのは,多分もっと一般的な法則があるからだと想像できる.
なんだ,ちゃんと科学は答えられているではないか.何が問題なのだ?
多分,こういった主張をする人たちは,こまごまとした個々の法則についてではなくて,「もっとも根源的な事実が,なぜそうなのかについては科学は説明できない」ということを言いたいのだろう.
ホスパ−スは,こういった主張はナンセンスだと言っている.なぜなら矛盾しているから.
何かを説明するということは,その何かを,もっと根源的な別の何かで説明するということだ.ちょうど,ケプラーの法則を万有引力の法則で説明するように.
「もっとも根源的な事実」が,なぜそうなのか説明するということは,「もっとも根源的何か」を「もっと根源的な別の何か」で説明するということだ.
これは明らかに矛盾である.